心理学 Q & A

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Q7.性格は遺伝で決まるって本当ですか?

私の神経質な性格って母親そっくりなんですけど,これってやっぱり遺伝でしょうか。小さいころからずっと親を見て育ってきたからじゃないでしょうか。「神経質の遺伝子」なんてあるのでしょうか。こんな性格のままではいやです。性格は環境や努力で変えられないでしょうか。

A.安藤寿康

神経質な親に育てられれば,子どもも神経質な行動を学習して,同じような性格になると考えるのは無理もありません。もしそれが本当ならば,同じ親に育てられた一卵性のふたごは,別々に育った一卵性のふたごよりもずっと似ているはずです。ところが,図に示すように,同じ環境で育てられても違う環境で育てられても違いがありません。むしろ遺伝子が100%同じ一卵性は,遺伝子が50%だけ同じ二卵性のおよそ2倍も似ていることから,ふたごが似るのは遺伝の影響によると考えられます。どの性格特性をみても遺伝の影響が無視できないことが,ふたごや養子による数多くの研究によって示されています。

それでは神経質の遺伝子があるのでしょうか。親が神経質だと子どもも神経質になるのでしょうか。血液型などは1か所の遺伝子で性質が決まりますが,性格のような複雑な性質は,たくさんの遺伝子の影響を受けますから,どれか1つの遺伝子を「神経質の遺伝子」と呼ぶことはできません。たとえば神経伝達物質の1つ,セロトニンに関わる遺伝子の短いタイプをもつ人は長いタイプの人より不安が高くなりやすいという傾向が報告されていますが,その遺伝子だけで説明できるのはほんの数パーセントですし,セロトニンは体や心のさまざまなはたらきに関係しているので,不安遺伝子と呼ぶことはできません。

性格に関わる遺伝子が親から子に伝わるときは,父親と母親からそれぞれ遺伝子が半分ずつランダムに伝わり,両親のいずれとも異なる新しい組み合わせが生まれますから,遺伝の影響を受けたとしても,どちらかの親と同じ遺伝的素質になるということは絶対にあり得ません。性格に関わる遺伝子の組み合わせも,人の顔立ちが遺伝的に皆異なるのと同じように,古今東西すべての人が皆違うと考えてまちがいないと思います。

こうした遺伝子の違いがどのくらい一人ひとりの性格の違いを説明するかをふたごのデータから算出すると,だいたい50%前後になります。これは残り50%が環境によることを意味します。しかし親の影響や家庭の影響(これを共有環境といいます)は先にも述べたようにほとんどみられません。むしろ一卵性のふたごですら違う一人ひとりに独自な非共有環境が重要なのです。これは状況により時間とともに変わる影響です。要するに性格は,自分のもともとの素質のうえに,そのときの環境の影響が加わってあらわれ出たものといえます。そこにあなたの努力が加われば,環境によってあなたの素質をより美しく表現することができるでしょう。

文献

安藤寿康 2000 心はどのように遺伝するか 講談社ブルーバックス

あんどう じゅこう
慶應義塾大学文学部教授。
専門は,行動遺伝学,教育心理学。
主な著書は,『心はどのように遺伝するか』(講談社)など。

心理学ワールド第29号掲載
(2005年4月15日刊行)