国際賞受賞者一覧

▼平成27年(第10回国際賞授賞者)

特別賞 北山 忍 ミシガン大学心理学部・教授
功労賞 春木 豊 早稲田大学 名誉教授
苧阪 直行 京都大学 名誉教授
奨励賞 阿部 修士 京都大学 こころの未来研究センター
北田 亮 自然科学研究機構生理学研究所
山本 真也 神戸大学大学院 国際文化学研究科

▼ 平成26年(第9回国際賞授賞者)


特別賞
松沢 哲郎 京都大学霊長類研究所
授賞理由:松沢哲郎氏は,これまで,チンパンジーのこころに関する研究を約40年弱にわたって推進してきた。人間の認知機能とチンパンジーの認知機能を比較し,私たち人間のこころの進化を解き明かし,“人間とは何か”という問いに答えるべく“比較認知科学”という極めてユニークな学問領域を創出し,その推進役として現在も精力的に研究をすすめている。氏は,対象となるチンパンジーをより深く理解するために,実験参加個体の名前を冠した“アイ・プロジェクト”として有名な,実験室での認知実験研究だけでなく,アフリカの野生チンパンジーの生息地に自ら積極的に赴き,そこに暮らすチンパンジーたちの行動をつぶさに観察し,実験室とフィールド,1個体から社会までを視野に入れたスケールの大きな研究スタイルを確立した。現在では,このようなアプローチを当たり前のものとして受け止め,実験室と野外を軽やかに往来する若い研究者を数多く育ててきた。
 このような,きわめてユニークなアプローチの中から,チンパンジーにおけるシンボルの利用や数の理解,人間とは異なる優れた記憶能力の発見,野外実験を駆使した道具使用行動の詳細な研究など,霊長類学,比較認知科学,ひいては心理学に多大な影響をもたらす成果を次々と見出してきた。
 また,氏は,対象となるチンパンジーの福祉や保全に積極的にかかわってきたことでもパイオニアであるといえる。SAGA(アジア・アフリカの大型類人猿を支援する集い)という,研究者・飼育関係者・保全関係者によるコンソーシアムを組織し,動物福祉的な観点から,日本でのチンパンジーの侵襲的な医学実験の停止に尽力し,2012年には日本から医学実験施設に暮らすチンパンジーが0になった。また,アフリカ,ギニアにおいても分断しているチンパンジー生息地を植林によって接続しようという“緑の回廊”プロジェクトを推進している。さらに現在,国際霊長類学会会長としても精力的に活動をされている。
 このようなたぐいまれなる業績に対して,2004年には紫綬褒章,そして2013年には文化功労者を受賞している。
 さらに,2009年には,京都大学霊長類研究所において国際共同先端研究センターを設立し,その初代センター長になり,2014年からは日本学術振興会の博士課程教育リーディングプログラム“京都大学霊長類学・ワイルドライフサイエンスリーディング大学院”のコーディネータとして国際的な人材育成を推進している。また,日本学術会議会員,最先端研究基盤支援事業“心の先端研究のための連携拠点構築”の代表者として,本領域の国際化と日本全体を視野に入れた研究基盤の確立にも尽力されている。
氏の活動は心理学のみならず広く日本の学術の国際化に多大な貢献をもたらしてきたといえるだろう。

功労賞
大野 僩 York University (Toronto, Canada)
Distinguished Research Emeritus Professor
授賞理由:Hiroshi Ono(大野僩)氏は中学まで京都で過ごし,その後渡米して心理学の研究者となった。現在はヨーク大学に在籍しカナダ国籍であるが,ポスドク研究員や在外研究員等として多くの日本人を受け入れるなど,日本人研究者の国際化に多大な貢献をしてこられた。また,客員として日本の多数の大学・研究所に滞在されている。専門は知覚心理学で,視覚による奥行き知覚に関する幅広い研究に携わり,特に,動きによる奥行き構造の知覚(運動視差)や視方向の知覚に関する心理物理学的研究の第一人者として知られている。心理物理学の教育にも注力し,数々のビデオやコンピュータ教材を発表している。また,工学,眼光学などとの共同研究も積極的に行い,心理学の学際的なプレゼンスを高めてきた。
 その厳しさとおおらかさを兼ね備えた人柄は世界で広く親しまれている。親しい友人の多くは今や各国で重要な地位についており,後進の日本人に直接紹介する形のみならず,日本人研究者全般の印象形成という点でも私たちが広く世界で受け入れられる素地を作っていただいた。
 日本でいう名誉教授の職につかれた今も,研究・社交の両面でまだまだ現役として活躍し,日本の若手育成にも労を惜しまず取り組む先生の貢献をここに称え,感謝したい。
1960年 Dartmouth College(米) 卒業(B.A.)
1965年 Stanford University (米) 修了 (Ph.D.)
1965年 University of Hawaii (米) Assistant Professor
1968年 York University (加) Assistant Professor
1977年 York University Professor
2004年 York University Distinguished Research Professor Emeritus (-現在)
奨励賞 足立 幾磨 京都大学霊長類研究所 業績リスト 業績紹介
授賞理由:足立幾磨氏は,精緻な実験心理学的手法に基づく動物の知覚実験で,世界的に高い評価を受けている。氏の研究のユニークさは,単に動物の知覚の現象的記述にとどまらず,常に進化の観点から実験結果が考察されている点にある。アカゲザルのサッチャー錯視,チンパンジーの共感覚的知覚を,ともに世界で初めて明らかにした研究などは,霊長類における知覚の進化を考えるうえで,世界的に大きな反響を呼ぶことになった。系統発生的な比較にとどまらず,知覚経験が視覚の発達にどのような影響を与えるかについて,チンパンジーを使って行った一連の個体発生的研究も,心理学のトップジャーナルに掲載されている。最近では,知覚の枠を超えて,言語や社会性の進化に研究の対象を広げ,世界的にも次世代の比較認知科学を牽引する研究者として,大いに期待されている。
出馬 圭世 California Institute of Technology 玉川大学 脳科学研究所 業績リスト 業績紹介
授賞理由:出馬圭世氏は,国際標準の心理学を神経科学に導入し,主に脳機能イメージング法を用いて,心理学および神経科学の進展に,世界的な著しい貢献をした。具体的には,社会的報酬の脳内基盤を世界で初めて明らかにした(Izuma et al.,2008)のを皮切りに,社会的報酬を期待した行動の効用の脳内表現を解明(Izuma et al., Journal of Cognitive Neuroscience, 2010),社会心理学上の最大テーマの一つである認知的不協和の脳内基盤を解明,(Izuma et al., Proceedings of the National Academy of Sciences, USA, 2010),そしてバランス理論に基づき,他者に対する態度が認知的に変容する神経基盤を解明した(Izuma & Adolphs, 2013)。これら一連の卓越した業績は,人間の高度な意思決定の脳内メカニズムについての理解を,短期間のうちに画期的に進展させた。また,自閉症者が他者からの良い評判を得ようという動機づけが低いことを行動実験によって明確に示した業績(Izuma et al., 2011)は,臨床医学的応用や,非定型発達者を理解し受け入れる社会制度の設計にも貢献することが期待できる成果である。出馬氏は,心理学と神経科学とを橋渡しする,学術的ならびに社会的に重要な新分野を国際的に牽引するリーダーの一人として,今後も一層の活躍が期待される。
森口 佑介 上越教育大学大学院学校教育研究科 業績リスト 業績紹介
授賞理由:森口氏の研究テーマは実行機能の発達である。実行機能とは行動を制御し目標志向的行動を実現する能力で,現在,発達心理学では最も注目を集める認知機構のひとつであり,非常に多数の研究がなされているが,ほとんどの研究においてその検討はストループ課題のような特定の問題場面について行われてきた。一方,森口氏は他者の行動を模倣するといった社会的場面において検討し,日本とカナダの幼児ではこの場面における実行機能の働きに相違があることを示すなど,実行機能を広く社会性の発達や自己観の文化的相違という文脈に位置づけたところに,氏の研究の特色があり,独創的な成果として評価される。近赤外分光法(NIRS)を用いて,幼児には困難とされる脳活動の計測を行い,前頭葉の成熟との関連性を探るなど,認知神経科学的手法を取り入れた先駆的研究も手がけている。その成果はPNASDevelopmental Scienceなどの一流の国際学術誌や国際学会で多数発表されており,いずれも高い評価を受けている。また,国際雑誌において“実行機能の発達”の特集号のGuest editorをつとめたり,2014 年のイギリス心理学会の発達セクションに基調講演者として招待されるなど,研究成果を国際的に発信するだけでなく,海外研究者との国際共同プロジェクトでも,主導的役割を果たしている。こうした研究業績を,日本にいながら堅実に積み重ねている点はおおいに評価できるものである。

選考経過

 昨年(2013年)の11月に公募し,今回は,特別賞に4名の推薦があった。また,奨励賞に自薦5名,他薦9名,計14名の応募があった。2月,3月の2回に渡る委員会での審査を行い,特別賞は国際賞選考委員会委員推薦を受けた,松沢 哲郎氏が,業績・経歴の質・量ともに特別賞にふさわしい高いレベルであることが確認され,授賞した。
また,大野 僩氏が,海外において日本の若手研究者の育成に多大な貢献があり,功労賞にふさわしいと判断され,授賞が決定した。
 奨励賞は,国際的に優れた業績を持つ中堅・若手心理学者に授与するものであるが,論文数,掲載誌の評価,代表的な国際誌掲載論文の内容に加えて,研究環境についても配慮した。候補者はいずれもそれぞれの専門性を発揮し,目覚ましい活躍をされている方々であったが,年齢,研究領域,当該研究成果の専門領域等での評価なども考慮して慎重に審査した結果,足立 幾磨氏,出馬 圭世氏,森口 佑介氏の3氏が奨励賞にふさわしいと判断され,授賞が決定した。
 国際賞の授賞式は,日本心理学会第78回大会会員集会(2014年9月9日)で行った。また,受賞者は同大会(同志社大学)において記念講演を行った。

▼ 平成25年(第8回国際賞授賞者)

特別賞 今田 寛 関西学院大学 名誉教授
授賞理由:今田 寛氏の研究テーマは多岐にわたるが,主たる功績は学習と動機づけの心理過程をヒトと動物の適応的・非適応的行動の実験を通じて明らかにしたことである。嫌悪刺激の回避学習など異常行動に関して今田氏が発表した諸論文は国際的に高く評価されており,とりわけ情動反応の学習に関する理論構築は特筆に値する。それらの研究はJournal of Comparative and Physiological Psychology, Integrative Physiological and Behavioral Science, Psychological Bulletin, Animal Learning & Behaviorなど多くの雑誌に掲載された。今田氏は,基礎研究と臨床実践を結びつけるための“科学者―実践家モデル”を初めて日本に紹介し,大学・大学院における心理学教育のあるべき姿を検討し,活発な啓発活動を推進した。また,日本の心理学研究を海外に紹介して心理学の国際化に大きく寄与した。今田氏は,国際心理科学連合(IUPsyS)の日本代表評議員を14年間務め,そのうち8年間は理事として世界の心理学の研究と教育の発展ならびに国際協力体制の構築に努め,日本の心理学者を代表する存在として活躍した。2016年に日本で開催が決定している国際心理学会議(ICP)については,招致委員会のAdvisory Board委員として積極的に活動を行って,招致成功に大いに貢献した。社団法人日本心理学会では,名誉会員に推戴され,2007年には国際賞(功労賞)が贈られている。2011年に瑞宝重光章を受章した。
高根 芳雄 University of Victoria
授賞理由:高根芳雄氏は1970年代以降今日に至るまで,心理学的計量的方法論に関する多数の国際的業績をあげているが,なかでも多次元尺度法の一つとして,現在世界中の多くのプログラムで採用されている最尤法によるALSCALが著名である。高根氏はさらに1987年に,現在広く使われているIRTと因子分析の関連を明らかにした。その他,多変量解析の方法の拡張として制約付き主成分分析,冗長分析の拡張,ニューラルネットワークによる知織の表現法等数々の論文を国際誌に発表してきた。その後心理測定における行列的方法(斜交射影と直交射影)に関心が広がり,内外の雑誌に多くの論文を掲載している。日本行動計量学会からは,それらの功績により1986年に第1回功績賞を受賞している。また,論文審査委員としても,Psychometrika誌(1984年―2009年),Behaviormetrika誌(1980年―現在)で活躍している。1936年にサーストンにより設立された心理測定学会において,高根氏は1986年に日本人として初めて会長(第51代)に選出され,翌年マッギル大学で心理測定学会を開催した。このように,高根氏の心理学における国際貢献はきわめて著しいものがある。
山岸 俊男 玉川大学 脳科学研究所
授賞理由: 山岸俊男氏は,心理学的アプローチに社会学的アプローチを融合した手法による,人間の向社会性の研究,信頼の研究,心の文化差の研究などを通して,新しい社会心理学研究のあり方,視点を世界に呈示してきた。また,手法,視点の新しさばかりでなく,実験に基づくその普遍的科学性は,社会心理学そのものの重要性を周辺分野に再認識させる結果となった。
それらの成果は,20に及ぶ著書や200を超える学術論文に結実している。著作について驚くべきは,その数だけでなく,引用件数にあり,総被引用数は7,700を超える。Yamagishi, T. ,& Yamagishi, M. (1994). Trust and commitment in the United States and Japan . Motivation and Emotion. は,引用件数が1,000に迫る勢いである。このことは,山岸氏の仕事がいかに世界の多くの研究者に影響を及ぼしているかを物語っている。
山岸氏の研究が与えた影響は,心理学,社会心理学にとどまらない。氏の研究の中心には,人間社会における利他性についての心理,社会的基盤に関するニッチ構築アプローチがあるが,このアプローチの独創性と意義は,2009年にノーベル経済学賞を受賞したエリノア・オストロムのノーベル賞授与公式理由書の中で,“オストロムの研究に先立つ山岸の研究を顕著な例外とする”と認められており,このことは氏の研究が経済学,政治学分野にも大きな影響を与えたことを示している。
山岸氏は,国内外の数々の学会の理事を務めるとともに,Journal of Personality and Social Psychology(アメリカ心理学会機関紙)を始めとする多くの国際誌の編集委員も歴任している。
これらの幅広い活動にたいして,2004年紫綬褒章が授与された。
奨励賞 河邉 隆寛 日本電信電話株式会社 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 業績リスト 業績紹介
授賞理由:河邉 隆寛氏は,ヒトの視知覚に関する心理物理学的研究を幅広く行ってきた。発表論文の数がきわめて多く内容も多彩で,ここで研究の概要を簡単に紹介することは困難であるが,各研究は堅実な心理物理学的方法論に基づいており,その数ゆえに散逸的にも感じる研究テーマにも徐々に統一的な思想がうかがえるようになってきた。マンガで用いられる動きを表現する線(モーションライン)が動きの知覚に実際に影響する効果を実証した一連の研究を始め,動きや変化を伴う視覚表現がポストディクティブ,つまり時間軸に逆行する後付けの解釈として形成される過程の解明が一つの軸をなすように思われる。数多くの共同研究および単著の論文からは,本人の希有な独創性と実行力がたしかに見て取れる。主に自らの才覚によって質量ともにこれだけの論文を有力国際誌に発表してきたという事実は,本人の国際的な能力を如実に示すものであろう。現職において海外での発表や国際交流の機会が増えており,今後は能力を活かした一層幅広い国際的な活躍が期待できる。まさに奨励賞にふさわしい,将来が嘱望される人材といえよう。
実藤 和佳子 九州大学高等研究院 業績リスト 業績紹介
授賞理由:従来,乳幼児期の社会的認知に関しては,きわめて早期段階から子どもが“ヒト”刺激に対して特異な選好性を示すことが着目されてきたが,授賞者は加えて“like me”,すなわち自身と類同的特徴を有する対象に子どもがさらに特別な関心を向けることに刮目し,それに関する独創的な研究を実に精力的に展開してきている。また,そうした傾向の相対的弱さが自閉症児に存在している可能性を明らかにし,さらに,他者を模倣することが乏しい自閉症児が他者から模倣された場合には他者に徐々に注目するようになり,延いては他者との相互作用や他者理解が促進され得るという興味深い結果を導いている。こうした一連の研究成果は,世界的にきわめて高く評価されており,そのことは授賞者が27歳の折(2008年)に,World Association for Infant Mental HealthよりNew Investigator Awardを得ていることや,若くして既にResearch in Autism Spectrum Disorder誌の編集委員を務めていることなどからも明らかである。授賞者の基本的関心は,社会的認知発達の基礎的研究が今後,進むべき方向性の一つを確かに予示するものであると同時に,自閉症スペクトラムなどの初期兆候の究明や自閉症児に対する発達支援などに対しても豊かな臨床実践的示唆を有するものと言え,授賞者が,今後,この領域における若き国際的リーダーの一人として,さらなる飛躍を遂げることが大いに期待されるところである。
村山 航 Department of Psychology, University of California 業績リスト 業績紹介
授賞理由:村山 航氏は,教育,学習の心理学,特に動機づけの活性化について教育心理学,社会心理学の観点から国際的な研究に取り組まれている。具体的には,数学学力縦断調査から,IQではなく,内発的動機づけ・有能感・深い処理の戦略が学業成績の伸びを予想することを示し,学校や家庭学習の見直しを示唆した研究。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,アンダーマイニング現象の脳内メカニズムを初めて明らかにし,神経経済学へもインパクトを与えた研究。外的報酬が記憶の固定を促進するとの年来の知見に対して,トリビア課題を導入し,内発的におもしろい課題に対して,報酬金は無駄になることを示し,生態学的妥当性の高い実験パラダイムの重要性を示した研究。他の人に勝ちたい(遂行接近目標)と他の人に負けたくない(遂行回避目標)の心理プロセスの異同を,因子分析,双生児データの行動遺伝学的分析などを通じて,両概念が計量心理学的にクリアに弁別できることを示し,全米教育学会のシンポジウムに結びついた研究。競争原理の導入とパフォーマンスに関する100年来のテーマをメタ分析し,ほとんど関係がないことを“競争対比プロセスモデル”で説明し,更に,メタ共分散構造分析で直接的に検証し,そのマルチメソッドアプローチが高く評価されたなど,研究手法の多様さ,学際性,問題設定の確かさと学会や社会からの高い注目度,学校場面や学習場面への適用について,今後の活躍が期待できる。

選考経過

2013年11月に公募し,今回は,特別賞に3名の推薦があった。また,奨励賞に自薦1名,他薦4名,計5名の応募があった。2月,3月委員会での審査の結果,特別賞の授賞者は業績・経歴の質・量ともに相応しいと認められた,国際賞選考委員会委員推薦の今田 寛,高根芳雄,山岸俊男各氏と決定した。

奨励賞は,国際的に優れた業績を持つ中堅・若手心理学者に授与するものであるが,論文数,掲載誌の客観的評価および応募時に添付を求めた代表的な論文の内容について審査をおこなった。候補者はそれぞれ専門分野で活躍している方であり,年齢,研究領域,当該研究成果の評価を考慮し慎重に審査した結果,河邉 隆寛,実藤 和佳子,村山 航各氏を授賞者と決定した。

国際賞の授賞式は,日本心理学会第77回大会会員集会(2013年9月18日)で行った。また,受賞者は同大会(札幌コンベンションセンター)において記念講演を行った。

▼ 平成24年(第7回国際賞授賞者)

特別賞 東 洋 東京大学
授賞理由:東 洋氏は,日本の教育心理学,発達心理学,教育工学,文化心理学の多岐にわたり,多大な功績がある。幅広い国際的人脈を背景に,日本の心理学を国際的水準に高めるため,国際的活動をされるだけではなく,国際学会に積極的に貢献した。日本で初めて東京で開催した第20回国際心理学会議(ICP1972)では事務局長,続く国際行動発達学会第9回大会(ISSBD)で大会委員長を務め,その功績により2007年度に国際賞功労賞を受賞した。日本の心理学界への貢献の最たるものは,国際共同研究の積極的かつ継続的な推進である。1970年から10年に及ぶ日米の幼児教育に関する共同研究(米国責任者:R.D.Hess教授)では,日本代表として気鋭の発達研究者をまとめ,それまでの海外研究者主導作業の形を排し,全ての点で協議した“共同体制”を行った最初の国際的研究として,先導的業績を残した。この共同研究により,初めて,子育て研究の欧米文化中心的バイアスの存在を指摘し,相対化を迫れたことは,心理学の歴史に刻まれるものである。その後,道徳判断や日常生活スクリプトの研究など次々と精力的に国際比較研究を展開し,優れた業績を上げた。また,幾多の後進を育成した。1987年に開催された国際行動発達学会第9回大会(ISSBD)を端緒とし隣接諸領域の統合化,“発達科学”化の気運を高めた。さらに日本発達心理学会を創設し学際的共同研究を進めることになった点も,今日の心理学の国際化に脈々とつながる大きな貢献である。
功労賞 福原 眞知子 常磐大学
授賞理由:福原眞知子氏の,専門の学問領域は,カウンセリング心理学,臨床心理学であり,実践領域としては,カウンセリング,心理療法,サイコエデュケーション等の研鑚を重ね,心理教育,カウンセリング実践の分野で優れた業績をあげた。特に国際応用心理学会(IAAP)に関しては,1994-2010年の間,理事を務められ,日本心理学会とIAAPの間の懸け橋として,日本心理学会の国際化に貢献した。また,早くから国際心理学者会議(ICP)のメンバーとして,日本の心理学者の活動領域の拡大に貢献した。その他,Elizabeth Nair(IAAP理事),David Ho(元ICP会長),D.C.Spielberger (IAAP元会長,APA元会長),また,昨年には,J.Prieto (IAAP理事,IUPsyS理事)を招聘し,日本心理学会の会員との交流の場を提供し,日本の国際関係強化や交流の拡大などに大きな貢献を果たした。さらに,1985年に,共同研究者であるA.E.Iveyが創始したマイクロカウンセリングの日本での継承・発展を目的に日本マイクロカウンセリング研究会(2008年より学会)を創設,数回にわたりIvey夫妻を招聘し,日本におけるマイクロカウンセリング,マイクロカウンセリング技法,技法を適用しての発達カウンセリング・心理療法などの普及につとめた。また,本学会国際委員会委員も務め,多くの国際的な活動や経験に基づき,大きな貢献を果たした。このように,福原眞知子氏は,国内はもとより,国際的な学術交流に,公的にも私的にも労を惜しまず貢献している。
奨励賞 中田 光紀 米国疾病予防センター・国立労働安全衛生研究所 業績リスト 業績紹介
授賞理由:最近の研究は,産業・組織心理学領域の臨床的研究であり,勤労者の心身疲労やストレスと細胞免疫の関係,睡眠と抑うつとの関係などを扱っている。複数の免疫指標と職業性ストレス指標,“精神的・物理的報酬の不均衡”,さらに職務満足感との関係を調査した研究であり,特定の免疫指標がストレス要因と有意な相関関係にあることを明らかにしている。日本の産業・組織心理学領域では見られないアプローチである。中田氏は,精神神経免疫学を主とする医学・生理学分野へのよりコミットした研究を展開しているが,職務満足感など心理学分野での重要な変数も扱っている。IFの高い国際誌に採択された論文・著書は67篇あり,その大半が筆頭著者である。大型国際プロジェクトを動かせる能力をアメリカの研究センターで発揮しており研究統括者としての手腕を高く評価できる。このような研究テーマ,研究アプローチに基づく研究は少ないので,後進の研究者に新たな視点を提供し,当該領域の研究の活性化に寄与するところ大である。
明和 政子 京都大学教育学研究科 業績リスト 業績紹介
授賞理由:チンパンジー,ヒトの胎児および幼児などを対象とした認知の進化・発達について興味深い研究が多い。国際的に高い水準の研究を展開できる能力はこれらの業績によく示されている。京大霊長類研究所において松沢哲郎氏を中心にして継続的に行われているヒトとチンパンジーの認知に関する比較研究の一翼を担う若手の研究者で,そのチームの研究の蓄積を背景に,優れた研究成果を国際的な場で発表し続けてきている。他者の行為認知・模倣やそれを通じた意図理解について,巧妙な実験を用いてヒトとチンパンジーを比較し,その進化までをも見通してひろく議論している点であり,人間理解の独自で重要な視点を提供している。その切れ味は鋭く,ロボティクスや脳科学など他の領域にも大きなインパクトを与えている。気鋭の若手として将来が嘱望される,本賞にふさわしい研究者である。
結城 雅樹 北海道大学文学研究科 業績リスト 業績紹介
授賞理由:北米と東アジアの集団行動の質的違いをシステマティックなモデルから指摘した世界初の論文,見知らぬ他者に対する信頼の文化差を検証した初めての論文,文化心理学と神経生理学の知見から従来見過ごされてきた文化差の初の指摘など,従来の常識を打ち破る研究が多く,国際的な反響を得ている。(1)氏が文化心理学の領域で,新しい研究手法も取り入れながら,成果を蓄積し,精力的に国際学会で発表していること,(2)自分達の研究のみならず,国際的舞台での著書の執筆担当などでも活躍されていること,(3)研究のまとめとしては,適応過程を文化と進化の視点から,社会生態学的な環境適応方略として理論構築を試みている。また,“関係流動性”という視点から対人関係を理解する枠組みを構築すべく精力的に研究をおこなっており,その研究成果は国際的に広く注目されている。こうした研究業績を基礎として,アジア社会心理学会の活動の中で日本人として重要な役割を担ってきたことも評価に値する。このことは,アジアを中心とした社会心理学者,文化心理学者のネツトワークの中で,氏が重要な地位にあることを示しており,日本の心理学の発展に寄与している。文化普遍性を説明する人間の関係性をダイナミックに予測し,説明することに挑む研究者であると高く評価できる。
渡辺 はま 東京大学教育学研究科 業績リスト 業績紹介
授賞理由:近年は,乳児の運動制御や感覚能力の発達に関して,行動および近赤外分光法による脳活動を指標としてデータをていねいに積み重ねており,この積み重ねで生後3か月の間に起きる大きな発達的変化について,一般性の高い理論が構築されることが期待される。心理学の基礎を背景に,行動的な手法と脳科学の手法を駆使できる国際的な研究者として,授賞に値する。脳科学の最先端の領域に,いい意味で,伝統的な心理学の発想と方法論を保持しつつ切り込んでいるところにあり,得てして知見の先駆性だけの競い合いになりがちな脳科学の分野において,少なくとも,長期的な意味で心理学の理論的発展におそらく資するであろう考究がしっかりとなされている。また,元来,主に成人の記憶研究において確かな実績を残してきたということからしても,幅広い心理学的視野を有していることが窺え,今後は,現在の乳児の知覚・運動という主テーマを超えた国際的活躍も大いに期待し得る。

選考経過

昨年(2011年)の11月に公募し,今回は,特別賞1名,功労賞1名の推薦があった。また,奨励賞に自薦5名,他薦3名,計8名(昨年と同数)の応募があった。2月,3月の2回に渡る委員会での審査を行い,特別賞は国際賞選考委員会委員推薦を受けた,東 洋氏が,業績・経歴の質・量ともに特別賞にふさわしい高いレベルであることが確認され,授賞した。
功労賞の福原 眞知子氏は国際会議の運営,国際的学会活動および日本の心理学界の国際化への貢献度などを,これまでの授賞者の貢献度等とも勘案したうえで,慎重に審議した結果,授賞を決定した。

奨励賞には,国際的に優れた業績を持つ中堅・若手心理学者に授与するものであるが,論文数,掲載誌の客観的評価に加えて,応募時に添付を求めた代表的な国際誌掲載論文の内容についても審査を行った。候補者はいずれもそれぞれの専門性を発揮し,目覚ましい活躍をされている方々であった。年齢,研究領域,当該研究成果の専門領域等での評価なども考慮して慎重に審査した結果,中田 光紀,明和 政子,結城 雅樹,渡辺 はまの4氏が授賞にふさわしいと判断され,授賞を決定した。

国際賞の授賞式は,日本心理学会第76回大会会員集会(2012年9月10日)で行った。また,受賞者には同大会(専修大学 川崎市)での記念講演を依頼し,講演が行われた。

▼ 平成23年(第6回国際賞授賞者)

奨励賞 蘆田 宏 京都大学准教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:蘆田 宏氏は,運動視の領域で心理物理学およびfMRIによる卓越した研究を行い,その成果は評価の高い国際誌に数多く掲載されている。注目すべきは,そうした論文の多くが,海外の様々な大学の著名な研究者との共同研究であり,研究を介した地道かつ深い交流が,彼個人の研究成果として結実しているだけでなく,日本の知覚研究を海外に知らしめることにもつながっている点である。その延長上に,国際的専門誌Perceptionの編集業務もあるのだろう。さらに,日本国内においても,海外の研究者を招いての国際ワークショップやセミナーをしばしば主催し,国内の研究者に海外研究者との交流の場を提供してきた。日本を代表する知覚研究者としてはもちろん,国際交流の実践家としても,国際賞奨励賞に相応しいと判断した。
佐藤 弥 京都大学特定准教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:佐藤 弥氏は,顔,特に表情や視線処理にまつわる対人相互作用に関して,実験心理学的・脳科学的な検討を行い,評価の高い国際誌に次々とその成果を発表してきた。公刊された英文の原著論文の数は,30代後半の若手心理学者の中で,群を抜いて多い。方法的にも,認知心理学的手法に加えて,fMRI,MEG,EEG,筋電等の多彩なアプローチを用いており,またその研究対象は,健常成人に加えて,脳損傷患者,広汎性発達障害者,非行少年,統合失調症患者など,広範囲にわたっている。基礎研究から応用的な研究までをカバーするこうした視野の広さも,氏の研究の特色である。その圧倒的な発信力で日本の心理学の国際化に大きな貢献をした佐藤氏は,わが国を代表する若手認知心理学者として,国際賞奨励賞にふさわしいと判断した。
島津 明人 東京大学准教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:島津 明人氏は,早稲田大学文学部心理学専修を卒業され,現在,東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の准教授として勤務している。
 島津氏の研究は,労働者の精神的健康に関するものである。この領域での研究は,これまで主として公衆衛生学の研究者が行ってきたが,島津氏は,心理学の立場から,心理学の方法論をもって,このテーマに一貫して取り組んでこられた。こうした基礎的な調査研究の土台の上に,ワーク・ストレスを改善して,労働者のWell-beingの向上をめざす研究を行ってきた。その成果は,国際誌の論文 27 編(うち第1著者としての論文が16編),英語著書2編などとして発表されている。本委員会では,研究成果を積極的に発表している点はもちろんのこと,産業保健心理学という新たな分野をわが国に定着させ,その実践を育てるために多方面から貢献している点が高く評価され,国際賞奨励賞にふさわしいと判断した。

選考経過

特別賞については,国際賞選考委員会内部で推薦し,議論したうえで決定することになっているが,今回は,過去2年間に続き,該当者なしとの結論に至った。

功労賞に自薦1名,奨励賞に自薦5名他薦3名計8名の応募があった。功労賞については,応募者の国際的な活動内容,日本の心理学ワールドへの貢献度などを,これまでの授賞者の貢献度等とも勘案したうえで,審査を重ねたが,授賞を見送りとなった。

奨励賞については,論文数,掲載誌の客観的評価に加えて,応募時に添付を求めた4-5編の代表的国際誌掲載論文の内容についても審査を行った。候補者はいずれもそれぞれの専門性を発揮し,目覚ましい活躍をされている方々であった。年齢,研究領域,当該研究成果の専門領域等での評価なども考慮して慎重に審査した結果,蘆田 宏氏,佐藤 弥氏,島津 明人氏の3氏の研究業績が授賞にふさわしいと判断した。

国際賞の授賞式は,日本心理学会第75回大会会員集会(2011年9月14日)で行った。また,授賞者には同大会(日本大学)での記念講演を依頼し,講演が行われた。

▼ 平成22年(第5回国際賞授賞者)

功労賞 坂野 雄二 北海道医療大学教授 業績リスト
授賞理由:坂野雄二氏は,日本の行動療法・認知行動療法のパイオニアのひとりである。国際行動医学会の理事を2001年から7年間にわたり,また世界行動療法認知療法会議のアジア代表を1995年から10年以上にわたり務めた。この間,2004年に世界行動療法認知療法会議をアジア地区として初めて神戸に誘致することに成功し,科学プログラム委員長として大会を成功に導いた。また,2008年の国際行動医学会大会では,準備委員会委員長を務め,大会を牽引した。海外の臨床心理学者との広いネットワークを利用して,数多くの国際臨床ワークショップを開催し,我が国の認知行動療法の普及に大きな功績を残した。坂野氏は我が国の臨床心理学の科学化,国際化,現代化を通じて,基礎心理学と臨床心理学を結びつけることに,大きな貢献を果たしたといえる。よって,国際賞功労賞を授与するにふさわしいと判断された。
奨励賞 平田 聡 林原生物化学研究所類人猿研究センター 主席研究員 業績リスト 業績紹介
授賞理由:平田氏は,飼育下チンパンジーの社会的知性に関して,国際的に注目され,数多く引用される重要な研究を次々に発表してきた。中でも,食物の隠し場所を知っている個体と,その個体がそれを知っていることを知っている個体の間の虚々実々の駆け引きや,道具の使用方法を熟練者から社会的に学ぶ際の的確な情報希求行動,他個体との協力行動に見られる誘いかけなどの詳細を明らかにしたことは大きな貢献である。実験心理学の統制された研究手法を動物の実生活に巧みに取り込み,具体的場面で発揮される彼らの高度な知性と柔軟な行動調整能力を明らかにしてきた点は独創的であり,奨励賞を授与するにふさわしい若手研究者であると判断される。
増田 貴彦 アルバータ大学 assistant professor 業績リスト 業績紹介
授賞理由:増田氏は,文化心理学の領域で国際的に注目を集める気鋭の研究者である。研究面での主な貢献は,“分析的認知”“包括的認知”という認知の文化的特徴を,注意をはじめとする知覚過程に着目しながら実証的に示したことにある。その成果は,他者の態度や感情の推論といった社会心理学的な過程だけでなく,視覚画像の処理といった基礎的な心理過程も,文化的基盤と深い相互関連性を持っていることを示し,心理学の幅広い分野にとって重要な知見をもたらした。これらの研究は一流の国際誌に公刊されて多くの引用を受けている他,海外の教科書にも紹介されるなどの反響を呼んでおり,本賞の授賞にふさわしいと評価された。
齋木 潤 京都大学教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:齋木氏は,視覚認知,なかでも物体表象や視覚性ワーキングメモリに関する認知心理学の領域で,評価の高い国際誌に次々と論文を発表してきた。いずれも,深い知識に基づく緻密かつ重厚な,質の高いものである。方法論的にも,実験心理学に限らず,計算論的モデリングや,機能的脳イメージングを組み合わせて複数の視点から検証を行っており,幅広い領域での成果も特徴と言える。また,数多くの国際学会での発表や講演を通し,あるいは英語による著書により,日本の心理学の国際化に寄与しており,日本を代表する認知心理学者として,国際賞奨励賞にふさわしいと判断した。
齊藤 智 京都大学准教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:齊藤氏は,記憶モデル研究に従事し,その成果は実験心理と記憶に特化した,質の高い雑誌に数々の質の高い論文として発表している。主な成果は,短期記憶(short-term memory)と作動記憶 (working memory)のモデルの検証にかかわるものである。言語性短期記憶に関する研究では,言語産出と短期記憶に共通するメカニズムを独自のパラダイムで検討するとともに,両者を支えるタイミング制御機構の存在を行動データで証明することに成功している。作動記憶研究の重要なテーマの一つである作動記憶スパン (working memory span)に関しては,スパン課題が何を測定しているかについて検討する中で,作動記憶内で起こる忘却のメカニズムを特定し,新たな理論的枠組みの提案に成功している。これらの成果の多くは,齊藤氏が主導的に実施してきた国際的な共同研究の成果に基づいたものであり,海外の共同研究者のネットワークを通じ,国際的にも高く評価されている。以上のことから,国際賞奨励賞の受賞にふさわしいと判断した。

選考経過

特別賞は国際賞選考委員会内部で推薦し,審議した上で決定することになっているが,今回は,昨年度に引き続き,該当者なしということで見送りとなった。

功労賞には他薦が1件あり,国際的学会活動ならびにその我が国の心理学の国際化への貢献を慎重に評価した結果,推薦された坂野 雄二氏は,授賞にふさわしいと判断した。

奨励賞については,自薦,他薦,1名のキャリーオーバーの候補者を含めて11件の応募があった。論文数,掲載誌の客観的評価に加え,応募時に添付を求めた4-5編の代表的国際誌掲載論文の内容についても審査をおこなった。年齢,研究領域をも考慮に入れた上で,慎重に審査した結果,平田 聡氏,増田 貴彦氏,齋木 潤氏,齊藤 智氏の4氏の業績が,授賞にふさわしいと判断した。なお,本年度は,キャリーオーバー制度を適用しなかった。

国際賞の授賞式は日本心理学会大会会員集会で行った。また,授賞者には大会での記念講演を依頼し,2010年第74回大会(大阪大学)で,講演が行われた。

▼ 平成21年(第4回国際賞授賞者)

奨励賞 河原 純一郎 産業技術総合研究所主任研究員 業績リスト 業績紹介
授賞理由:河原氏は,視覚的注意に関する認知心理学的研究で,卓越した国際的業績を挙げている。中でも注意の瞬き現象に関する理論的・実証的研究は瞠目に値し,この現象が生じる原因について,既存の説を覆す斬新なモデルの構築とその実証を行ったこと,これにより,謎であった注意の瞬きの逸失現象を説明しかつ実証したこと,注意が空間的に分割できることを明快に示したこと等は,とりわけ大きな成果である。成果は一流国際誌に次々と公表されており,国際共同研究を主導して世界的にも大きな注目を浴びている。その業績は質量ともに抜きん出ており,国際賞奨励賞の授賞にふさわしいと判断した。
坂本 真士 日本大学教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:坂本氏は,臨床心理学・臨床社会心理学の領域において,評価の高い国際誌に次々に高質な論文を発表してきた。抑うつ尺度に関する基礎的研究,自己注目と抑うつとの関係に関する実証的・理論的研究,反すう型・気晴らし型という反応スタイルと抑うつとの関連性などの研究で優れた業績を挙げており,論文の被引用回数も多い。本邦の臨床心理学領域のリーダーとして,その国際化に大きな貢献をなしてきたと認められる。それに加え,近年では地域の自殺予防活動への実践的取り組み等も行っている。以上のことから,坂本氏は国際賞奨励賞の授賞にふさわしいと判断した。
月浦 崇 東北大学准教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:月浦氏は,健常者を対象とした機能的磁気共鳴画像(fMRI)と,脳損傷患者を対象とした神経心理学的研究という異なったアプローチから,エピソード記憶や,顔と名前の連合記憶を担う脳内メカニズムの解明をおこなってきた。独創的な実験デザインにより,海馬がエピソード記憶の再構成に関与すること,笑顔の顔と名前の連合が,報酬処理に関係する前頭眼窩皮質と海馬の活動に関連すること等を明らかにし,評価の高い国際誌に次々と成果を公表している。方法論的にも的確な,基礎と臨床をつなぐ研究であり,国際賞奨励賞の授賞にふさわしいと判断した。
筒井 健一郎 東北大学准教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:筒井氏は,視知覚および高次認知機能に関する生理心理学的研究を行ってきた。主たる研究テーマは立体視機能で,頭頂連合野後部に,両眼視差ときめの勾配という異なった奥行き手がかりに共通するニューロン活動を見いだしたことは,これらの手がかりを統合する神経活動の発見として,とりわけ大きな成果である。また近年では意思決定やその際に働く情動,さらにはそれと性格特性の関係などを前頭葉の活性化から検討するという新しい展開を見せている。これらの成果はいずれも一流の国際誌に掲載されており,国際賞奨励賞を授与するにふさわしいと判断した。

選考経過

特別賞は国際賞選考委員会内部で推薦し,審議した上で決定することになっているが,今回は,昨年度に引き続き,該当者なしということで見送りとなった。

功労賞には応募がなかった。

奨励賞については,自薦,他薦,2名のキャリーオーバーの候補者を含めて8件の応募があった。論文数,掲載誌の客観的評価に加え,応募時に添付を求めた5篇の代表的国際誌掲載論文の内容についても審査を行った。主著論文を中心に評価を行ったが,対応著者(corresponding author)にも配慮した。年齢,研究領域をも考慮に入れた上で,慎重に審査した結果,河原 純一郎氏,坂本 真士氏,月浦 崇氏,筒井 健一郎氏の4氏の業績が,授賞に相応しいと判断した。また,1名の方をキャリーオーバー制により,来年度の奨励賞の審査対象者とすることに決定した。

国際賞の授賞式は日本心理学会大会で行った。また,奨励賞の授賞者には,大会での記念講演を依頼し,2009年第73回大会(立命館大学)で,講演が行われた。

▼ 平成20年(第3回国際賞授賞者)

功労賞 祐宗 省三 広島大学名誉教授
授賞理由:祐宗先生は国際心理学者協会(The International Council of Psychologists, ICP)の活動を通じて、日本の心理学の国際化に努力されました。1999年には先生の功績が認められて、ICPの元会長との連名で「祐宗・ベイン研究奨励賞」が創設されました。この賞は若手研究者の育成のための賞で、これまでに日本人を含む世界の若手研究者7名に授賞しております。心理学の発展に貢献された祐宗氏の功績をたたえ、日本心理学会国際賞功労賞を授与します。
奨励賞 星野 崇宏 名古屋大学准教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:星野氏の研究テーマは計量心理学で,従来よく利用されている因子分析,共分散構造分析などと異なり,共変量と従属変数間の回帰関数を仮定しない傾向スコアを用いた「傾向スコアによる重み付きM推定法」を提案しています。この方法により,共分散構造分析モデルや項目反応理論などでの潜在変数上の因果効果が解析可能となりました。また,顔の表情に基づく情動の評価やその知見に基づくパーキンソン病患者の脳損傷部位の推定など,幅の広い研究も行っています。星野氏は32歳ですが、多くの論文をレベルの高い雑誌に発表されており、国際賞奨励賞の授賞に相応しいと判断しました。
今水 寛 ATR研究室長 業績リスト 業績紹介
授賞理由:今水氏はヒトを対象とした行動実験とfMRIを使った実験に基づいて、川人氏の小脳学習モデルを高次学習モデルへと発展させました。学習する領域を小脳のみならず、大脳と小脳の連関、そして前頭葉や頭頂葉も含む脳全体のネットワークへと広げられました。ヒトは複数の感覚と運動の関係を同時に学習し,学習したことを素早く切り替える能力があります。今水氏は心理学の大学院時代に始まる感覚運動学習を基礎にして、このヒトの高次脳機能の解明をされました。多くのすぐれた論文を発表されており、国際賞奨励賞の授賞に相応しいと判断しました。
松井 三枝 富山大学准教授 業績リスト 業績紹介
授賞理由:松井氏は統合失調症患者の認知機能障害に関心を持ち、その臨床研究に携わってきました。1990年代には統合失調症の眼球運動を検討し、その成果を国際誌に発表されました。その後、心理学者として、認知機能障害を検討するための神経心理学的検査の開発と検討、および障害のメカニズムを記憶や社会的知識の構造より理解することに取り組んでおられます。最近は脳画像による知見との関連も検討されておられます。これらの研究は、多くの国際誌に発表されております。臨床現場での心理学者の研究活動には多くの困難があると思われますが、松井氏は心理学を背景に統合失調研究グループで重要な役割を果たしておられます。以上の理由で、国際賞奨励賞に相応しい判断しました。

選考経過

特別賞は国際賞選考委員会内部で推薦し,審議した上で決定することになっているが,今回は該当者なしということで見送りとなった。

功労賞は2氏の応募があったが,祐宗省三(広島大学名誉教授)が国際心理学者協会(The International Council of Psychologists, ICP)などの活動により,国際交流等に顕著な貢献があり,授賞にふさわしいと結論された。

奨励賞については,自薦,他薦を含めて7件の応募があった。論文数,掲載誌の客観的評価に加え,応募時に主な論文の別刷の添付を求め,それらの論文内容についても審査を行った。また,業績が量的に少ない若手の研究者等についても配慮し,量のみの評価にならないよう考慮した。さらに,研究領域も考慮した。その結果,星野崇宏,今水寛,松井三枝の3氏の業績が授賞に相応しいと判断された。また,2名の方をキャリーオーバー制により,来年度の賞の審査対象者とすることとした。

国際賞の表彰式は日本心理学会大会で行い,特別賞,奨励賞の授賞者には大会で記念講演を依頼することになっている。2008年の北海道大学の第72回大会では2007年, 2008年の授賞者の講演が行われた。

▼ 平成19年(第2回国際賞授賞者)

特別賞 大山 正 元東京大学教授、日本大学教授
授賞理由: 大山氏は視知覚を中心とする実験心理学、心理学研究法、心理学史の専門家であり、多数のすぐれた成果をあげられている。1952年から2007年に出版された130編の論文の中で、英文論文が67編を占めており、それらの論文はInternational Journal of Psychology, Perception, Psychological Research, Vision Research, Psychological Bulletin, Psychologia, American Journal of Psychology, Perception & Psychophysics, Psychological Research, Empirical Studies of Arts など多くの海外の学術誌に掲載され、海外に研究を発信してこられた。また、Japanese Psychological Research に掲載された論文も多く、2007年49巻では錯視についての特集号を編集されている。1990年京都で開催された国際応用心理学会議では実行委員会副委員長を務められ、会議の成功に大きな貢献を果たされた。さらに2007年10月開催される予定の国際心理物理学会議でも、Recent attempts and versatile applications of multi-dimensional psychophysicsという特別セッションを行場教授とともにオーガナイズされるなど現在も広く国際的に活躍されている。
功労賞 曻地三郎 社会福祉法人しいのみ学園理事長・園長
授賞理由:
• 1970 韓国の障害児教育と心理学教育の推進
• 2002 中国の障害児教育と心理学教育の推進
• その他 コロンビア大学、ハワイ大学、中国長春大学、華東師範大学、ユネスコ本部幼児教育指導部で日本的な臨床心理学研究の紹介と普及
東 洋 東京大学名誉教授・清泉女学院大学教授
授賞理由:
• 1972 第20回国際心理学会議組織委員・幹事・事務局長
• 1974 国際心理科学連合記念基金運営委員会副委員長
• 1980-1988 国際心理科学連合理事
• 1988-1992 国際心理科学連合理事・副会長
• 1984 国際行動発達学会副会長
• 1990 国際応用心理学会議国際心理学会連絡委員長
• 1999 日本心理学会国際委員会設置
今田 寛 広島女学院大学学長
授賞理由:
• 1990 国際応用心理学会議国際交流委員長
• 1990 国際心理科学連合日本代表代議員
• 1992-2004 国際心理科学連合理事
• 1996 国際心理学会議シンポジウムオーガナイザ
奨励賞 今井むつみ 慶應義塾大学環境情報学部 教授 業績一覧
千住 淳 ロンドン大学バークベックカレッジ心理学科リサーチフェロー 業績一覧
本吉 勇 日本電信電話株式会社 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 研究主任 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 連携講座准教授 業績一覧

選考経過

特別賞は国際賞選考委員会内部で推薦し、審議した上で決定することになっているが、今回は元東京大学・日本大学教授大山正氏が推薦され、業績、経歴等を検討した結果、質・量ともに特別賞にふさわしい高いレベルであることが確認された。

功労賞はしょう地三郎、東洋、今田寛の3氏の推薦があり、いずれも国際会議、国際交流等に顕著な貢献があり、授賞にふさわしいと結論された。

奨励賞については、自薦、他薦を含めて7件の応募があった。論文数、掲載誌の客観的評価だけでなく、応募時に主な論文の別刷の添付を求め、それらの論文内容についても審査を行った。また、業績が量的に少ない若手の研究者等についても配慮し、量のみの評価にならないよう考慮した。さらに、キャリーオーバー制度を設け、今回の授賞対象にはならなかったが優れた業績のある応募者については、本人の了解を得た上、来年度の賞の審査対象とすることとした。

国際賞の表彰式は日本心理学会大会で行い、奨励賞の授賞者には大会で小講演を依頼することとし、2007年の大会では2006年の授賞者の小講演が行われる予定である。

▼ 平成18年

特別賞 印東太郎 カリフォルニア大学アーヴァイン校、慶應義塾大学名誉教授
授賞理由: 先生は日本における数理心理学の草分けで、視空間、色彩空間、記憶など多くの領域で、理論的な数理モデルを構成し、それをデータに当てはめてその検証を行い、優れた成果を挙げられた。それらの研究は、Psychological Review, Journal of Experimental Psychology, Journal of Mathematical Psychology, Perception and Psychophysics, Proceedings of the National Academy of Science, Color Research and Applicationなど多くの雑誌に掲載された。また、数多くの論文をJapanese Psychological Researchに発表し、その価値を高めた。
功労賞 本明 寛 日本健康心理学会理事長、早稲田大学名誉教授
授賞理由:
• 1990国際応用心理学会議の開催と運営
• 1993国際健康心理学会議の開催と運営
• 2000アジア健康心理学会議の設立
成瀬悟策 吉備国際大学教授、九州大学名誉教授
授賞理由:
• 1987国際イメージ学会第3回大会の開催と運営
• 1987第1回アジア催眠学会議の開催と運営
奨励賞 亀田達也 北海道大学教授 業績一覧
村上郁也 東京大学助教授 業績一覧
西田眞也 NTTコミュニケーション科学基礎研究所主幹研究員 業績一覧
渡邊克巳 東京大学助教授 業績一覧